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羽音が煩い。
ラウトに睨まれ、カリンの顔は真っ赤に染まった。
ここで大声を出せば、対象に気付かれるのは目に見えている。
もし相手に聞こえていなくても、鴉が一斉に飛び立ったとあらば、何かあると警戒するだろう。
さらに捕らえることが難しくなってしまう。
何も考えずに大声を出した自分が恥ずかしく、いたたまれない気持ちになったのだ。

「からすさん……行っちゃったね」
「ううっ……クラウド、それ以上言わないで……!」

クラウドが首を傾げると、腹を抱えて笑い転げる男が一人。
無心……無心になるんだ、カリン……!と、自分に言い聞かせた。

「ふはっ……息、でき……っ……ふっ……ははっ……!」
「イル、いい加減にしてください」

一喝入れられても、まだ笑っている。
さすがのラウトもこれには愛想を尽かしたようだ。
反対側を向いてしまった。

「ねぇラウト、何で焚き火なの?」

言いながら覗き込んだ時の、ラウトの顔といったらない。
どこまで無知なんですか、常識でしょう、馬鹿ですね。
不思議なことに、口に出していないはずの嫌味が聞こえてきた。
その哀れみの表情が、全てを語っている。

「魔物除けだよ、カリンちゃん」
「魔物徐け?」
「魔物だけに限らず、野生の動物なんかでもそうだけど……煙を嫌う種が多いんだ」
「へぇ……すごい! イルって物知りなんだねっ!」
「貴女が知らないだけでしょう。これは常識、物事を自分基準で考えるのはやめてください」
「うぐっ……!」

毒を含んだ言葉達が頭に突き刺さる。
試験が終わったら真面目に勉強しよう、カリンは固く心に誓った。